明治の人のハレー彗星の捉え方

 2013-12-24 22:46:54

明治時代には、ハレー彗星の尾が地球と重なり、人類が滅びるという外国の学者の説が知られていたようです。

明治43年(1910)3月刊行の『ハレー大彗星の話』という本に、5月19日前後に訪れるというハレー彗星について紹介されています。

この本は全ての漢字にふりがなが振ってあるので、優しげな文章の体裁からも、少年少女向けの科学の本のようです。

著 者は外国の学者がハレー彗星の尾による人類滅亡の説を説いているが、『恐らくは何の危害も起こるまい。』として、『我らは1815年及び1861年の両 度、ある彗星の尾を通過したが、何らの危害をも受けなかったのを見ると、あるいは今回の衝突に際しても心配することはあるまい』、と読者を安心させ、続け て彗星観察時の美観や、ハレー彗星発見の由来、古い文献に現れるハレー彗星の記録等が載り、良質な少年少女向けの科学の本だなと思いました。

『と ころが、彗星の長々引きずって歩いている尾の長さは、二千万マイルないし三千五百万マイルもあるのだから、地球が彗星の頭から千六百万マイルくらいの所に 来れば、地球は彗星の尾の中に入ってしまう。すなわち何時間かの間は地球は彗星の尾に包まれてその中を通るのである。

ただ一口に尾の中を通ると言えば何となく恐ろしく聞こえるが、恐らくは何の危害も起こるまい。』p14

『フラマリオン氏はまた、こう言っている。

予((よ=自分のこと))はこの際における結果をあらかじめ断言することは出来ない。けれども空気中の酸素が、彗星の尾に含まれる水素と化合することとなれば、それこそ地球の上の住民や動物は窒息を起こして、死んでしまわなければならぬ。

幸いにこれを反して、もし空中の窒素の量が減ずるという現象が起これば、酸素ばかり多くなり、それがため我ら住民は、にわかに非常の愉快を感じ、やがて愉快の極点に達し、狂気の状態に陥り、精神錯乱の結果、その運命を喜びつつ、絶滅してしまうかもしれない。

以 上はフラマリオン氏の説であるが、あまりに推測が過ぎはしないか、今、彗星の尾の性質を確言することは出来ないけれども、非常に軽くして、希薄で霧のよう な物らしい、そしてそのような非常な勢いで運行していると見れば差し支えない。ところで、我らは1815年及び1861年の両度、ある彗星の尾を通過した が、何らの危害をも受けなかったのを見ると、あるいは今回の衝突に際しても心配することはあるまいとは、一般の学者の説である。世人もって安んじて可なり だ。』p15 

天水晶の心臓

過去に書いたものでも置いて行こうかと思います。

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