仏教概観

インドには仏教以前にバラモン教の長い伝統がありました。

バラモン教の神話の神々は、同じアーリア民族で同じ神話を共有するヒッタイト人の前14世紀の外交文書にも現れます。

この時代ヒッタイトは小アジアから中東に進出していて、聖書の創世記に登場するユダヤ人の始祖アブラハムは、このヒッタイトから畑(墓地にするための洞窟付き)を購入しています。

バラモンとは、インドのアーリア民族の祭祀階級のことです。

釈迦も初期仏教時代にはバラモンと呼ばれていました。

釈迦は出家してバラモンの弟子になり、悟りを開いてからもバラモンと呼ばれていたので、本人はバラモン教徒のつもりだったのかもしれません。

バラモン教と仏教の関係は、ユダヤ教とキリスト教の関係に似ています。

バラモン教=ユダヤ教

小乗仏教=カトリック

大乗仏教=プロテスタント

なので仏教では、バラモン教の神話と神々を共有しています。

輪廻もバラモン教の思想です。

『かのアートマンは実に心臓(白蓮華)の中にある。そこには百一本の脈管があり、それらの一本ごとに百本ずつの小脈管があり、この小脈管の一本ごとにそれぞれ七万二千の毛細管がある。ヴァーナ(体気)はそれらの中を速やかに動きまわるのだ。次に、一本の脈管によってウダーナ(上気)は上昇し、善行によって福徳の世界へ、悪行によって禍悪の世界へ、善悪両行為によって人間の世界に導く。(プラシュナ=ウパニシャッド)』

二度と生まれ変わることのない境地もバラモン教にあります。

バラモン教ではアートマン(真我)が上方の道を辿り、太陽に達すると、二度と生まれ変わることのない状態、不死を得ると説きます。

上方の細い、とても難しい道以外に入り込むと、輪廻の輪から抜けられないと説きます。

原始仏典では、仏陀は複数形で登場します。

仏教初期には、仏陀とはバラモンの賢者を指す言葉だったからです。

釈迦は『仏教』を説かず、バラモン教の聖者として語っていましたが、教団組織の発展と共に、バラモン教とは違うものとされて行きます。

教団の発展と共に、仏陀が釈迦一人を指す語とされたあと、次には釈迦以前にも仏はいたはずとして、過去七仏(釈迦を含めて)が作られましたが、これは元々、バラモン教の伝統で『七人の仙人』がいたとされるのを、仏教側では七人目の仙人こそ釈迦だと主張していたのが、後に過去七仏に変化したものです。

仏教の発展と共に女性差別が起こり、それは大乗仏教の発展によって解消されますが、原始仏典では女性差別はないみたいです。

『心がよく安定し、知恵が現に生じているとき、正しく真理を観察する者にとって、女人であることが、どうして妨げとなるでしょうか。

「我は女であろうか?」「我は男であろうか?」また「我は何者なのだろうか?」と、このように迷っている人こそ、悪魔が呼びかけるのにふさわしいのです(サンユッタ・ニカーヤ)』

神格化される以前の原始仏典に載る釈迦は、釈迦自身を含めた弟子たちとで、互いに非難するところはないだろうかと、相互に確かめ合っていました。

蓮華座に座る仏や、蓮華から生まれる等の表現は、バラモン教でアートマンが、蓮華に喩えられる心臓に住むからだと思います。

お墓の由来は仏塔(ストゥーパ=卒塔婆)です。

インドでは、釈迦の骨を納めて仏塔を立てました。

後には仏塔を増やすために骨を取り出し、それを砕いて多くの仏塔を立てますが、釈迦の骨には限りがあるので、水晶を釈迦の骨に見立て、仏塔を作るようになりました。

この伝統が日本に伝わり、死者の骨を塔状の墓に納めるようになりました。

お墓を卒塔婆=そとばと言うのは、仏塔のサンスクリット語ストゥーパからの音写です。

火葬にしてから遺骨を壺に納めて土に埋めるのは、リグ・ヴェーダの時代にはもう行われていたそうです。

ちなみに位牌は元々儒教の伝統でした。

中国に仏教が伝わってからは、道教との勢力争いが激しく、道教側では仏教に対抗するため、老子化胡経というものを作りました。

これは老子の思想が仏教ととてもよく似ていることを、仏教・道教双方が認めたため、道教側が、老子は周の時代に西方に向かい消息を絶ったという伝説を利用して、老子がインドに行き、釈迦に仏教を伝えたということにした内容でした。

そこから、老子と釈迦はどちらが古いかという、道教と仏教の論争が始まります。

釈迦の生きた時代が、どんどん昔になっていったのはこのせいです。

釈迦も老子も、生まれたときに天地を指さして、「天上天下唯我独尊」と言ったという伝説は、この争いから生まれたものです。

さらに仏教側は、中国の孔子や、老子、荘子、三皇五帝といった主要な人物を、全て菩薩の化身だと主張しました。

日本で平安時代に起こった本地垂迹説の走りです。

本地垂迹説とは、日本の神々は皆仏教の仏や菩薩の化身だと、仏教側が主張するものです。

天照大御神は大日如来の化身とされます。

奈良時代には、平安時代に空海が伝えた真言密教以前に、雑密と呼ばれる一部の密教経典が伝わっていました。

その雑密の孔雀明王延命持仙秘法を用いて、神通力を発気したといわれるのが、修験道の開祖役小角です。

仏教伝来から順次日本に伝わった主要な六つの宗派は、南都六宗と呼ばれます。

平安時代には空海が真言宗を伝え、最澄が天台宗を伝えました。

鎌倉時代には日本に浄土真宗や日蓮宗が起こり、中国から禅宗が伝わりました。

天水晶の心臓

過去に書いたものでも置いて行こうかと思います。

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