大正13年におけるKKK(復讐するは我にあり)

2013-12-28 20:00:02

私はアメリカの潜在的な反日感情は、第二次大戦後も内在し続け、1980年代のジャパン・バッシングでそれが表に出た印象があるんですが、これが戦前の日本だったら、バブルが崩壊する前に宣戦布告していたかもしれないなと思います。

でも戦後の日本は、打たれ強さという美徳(?)を身につけたように思います。

徹底的に敗れたことのなかった国が、徹底的に敗れた痛みと引き換えに身に付けた能力なので、当時のアメリカをやり過ごしたように、中国に対しても上手くあしらって欲しいなと思います。

日本のポップカルチャーの影響が浸透し、エコノミックアニマルのイメージだった当時の日本と違い、今のアメリカは親日の人がすごく増えたんじゃないでしょうか。

中国もいつか親日の人がたくさん増えればいいなと思います。

戦後はアメリカ視点からの教育のせいで、日本の主要な都市を焼け野原にし、さらに原爆を二つも落としておきながら、アメリカは正義の味方で、悪者の日本をやっつけた的なイメージが最近まで浸透していましたが、アメリカにも負の部分はあるのです。

大正13年の本で、『KKKに就て((ついて))』(1924)というものがあります。

これは著者山桝儀重(やまますのりしげ)が、テキサス滞在中に見聞したKKKについて、解説したものです。

この人は代議士です。

ちなみにKKKというのは、「プロテスタントの白人」を至上とする団体(皆が知ってる秘密結社)の名称です。

KKKに就いて

KKK

KKKは現在ではマイナーな存在ですが、大正13年(1924)当時のアメリカではとても大きな勢力でした。

実はこの本の出た翌年1925年には、KKKで有力な立場にあった(グランド・ドラゴンの称号により、全ての役員の任命権があった)デビッド・カーチス・スティーブンソンが、女性教師マッジ・オーガスティン・オーバホルツァーを拉致し、強姦した上全身を噛んで酷い傷を負わせるという事件が公(おおやけ)になり、KKKのイメージは失墜して会員数が一気に減ります。

丁度この本の出た大正13年(1924)がKKKの最盛期で、会員は500万人以上いたと言われます。

政治家や警察にもKKKの会員が多くいたそうです。

KKKは酷い事件を数多く起こしますが、それを批判するマスコミもあり、批判する議員もいて、それをKKKと利害関係にある勢力が動いたんだなと思うか、一部のアメリカ人の良心を信じるかは自由ですが、私は両方だと思います。

『日本では先日カリフォルニアで日本人が二人殺害された、これは多分KKK団のせいであろうということから余程問題が重大視されているようであります』p2

KKKはKnight of the Ku Klux Klanを略したもので、著者はクー・クラックス・クラン騎士団と訳しています。

クー・クラックス(Ku Klux)というのはギリシア語のククロス(KuKlos)から出たもので、ククロスというのは円周の意味を持ち、KKKの結社員は円陣を作り、その中で協議するのでこの名が付いたということです。

彼らの別名はインビジブル・エンパイア(nvisible Empire)で、見えざる帝国という意味です。

KKKのリーダーはエンペラーと称するそうです。

大正13年当時のKKKの入会金は10ドルで、宣誓式で最初に読むのは新約聖書ローマ人への手紙第12章だそうです。

内容としては博愛を説き、

『汝らを責むる者を祝し、これを祝して呪うな』(ローマ人への手紙12.14)

我れ(神)が汝(信者)の復讐をするから自ら復讐してはならない、

『主、言いたまう。復讐するは我にあり』(ローマ人への手紙12.19)

ということなんですが、KKKは神に任せずに、自分の気に入らない相手に自らの手を下します。

『KKKに就て』によれば、当時KKKの団員がニューヨークの公開の席で、彼らの主張として5つの事項を語ったそうです。

①『米国の各社会各階級における最良分子が米国を支配すべきである』p6

②『従来淫蕩的に流れたる米国の文学をば純化せしめ、国民を堕落から防がなければならぬ』p6

③『今や頽廃の極みに達したる騎士道の精神を発揚すること』p7

④『男子は妻を愛し、なるべく長く妻と共に時を過ごし、妻は家事に従事し成るべく多くの時間を家庭で費さなければならぬ』p8

⑤『米国民の家庭は米国の理想と精神とを永遠に維持すること』p8

KKKの有力な指導者が1925年に失態を犯していなければ、アメリカは第二次大戦でファシズム国家の一つになっていたかもしれません。

KKKは元々、1866年5月に誕生したそうです。

南北戦争により奴隷解放が行われ、それに危機感を持った一部の白人が、夜馬に乗って黒人の村を走り廻り、脅しつけたのが始まりとされます。

当時団員は50万人に増え、非人道的であるというので、1869年に結社の解散を命じられますが、彼等は他の名目で非人道的行為を続けたので、1871年、大統領グラントに軍隊をもってKKKを討伐する権能が与えられ、その結果1872年には霧散したそうです。

しかし第一次大戦中の1915年、11月の感謝祭の夜、ジョージア州アトランタのストーン・マウントという岩山の麓で、KKKでエンペラーの称号を持つウイリアム・ジョセフ・シモンズが、同士数十人と語らい再びKKKを組織します。

その中には以前のKKKの団員もいたそうです。

エンペラーのシモンズは、元メソジスト派(キリスト教プロテスタントの一派)の伝道師だったそうです。

KKKの正式な手続きと宣誓式は、翌1916年、秋の感謝祭の夜、ストーン・マウントの岩山の頂上で行われました。

シモンズの次に権力があるのはクラークとエヴァンスの二人だそうです。

当時の新聞によれば、一人10ドルの入会金の内、クラークの手元に入るのが3ドルで、結社員の制服である頭からかぶる白い服はクラークの工場で作り、3ドル50セントで出来るものを6ドル50セントで販売したそうです。

貨幣価値の変化を考慮すると、1916年の10ドルは、2011年の203.55ドルくらいになるようです。

http://www.westegg.com/inflation/

大正13年当時、アメリカでKKKの会員がいないのは、ニューオリンズ・モンタナ・ユタの三州だけで、その他はどんな田舎にも結社員が必ず居ると言われたそうです。

KKKの活動は、自分たちの主義・主張に反する者への脅迫・追放・リンチ・放火・殺人、等です。

KKKの批判対象は、プロテスタントの白人を除く全てに向かい、黒人・ユダヤ人・黄色人種・カトリック教徒(白人含む)、さらにKKKの主義・主張に反した全ての者が対象でした。

オクラホマ州の黒人の村はKKKに追放命令を出され、村人全員が追放されると白人達が来て村を占領した、と当時の新聞に載っていたそうです。

KKKは選挙運動にも精力的で、当時たくさんの議員がKKKの手により当選したそうです。

丁度『KKKに就て』の著者がテキサス州に居たときも、上院議員の一人がKKKの後援で当選し、上院ではKKKの後援によって当選した者には資格がないという意見も出たそうです。

南部の諸州ではKKKによるボイコットにより、ユダヤ人とカトリック教徒の多くの店舗が閉店に追い込まれたそうです。

著者がテキサスに居た頃は、方々のカトリックの教会が放火され、新聞はKKKの仕業(しわざ)だと報じていたそうです。

警察や裁判所にもKKKが多かったそうです。

『私がおります時にある州で警察署長がどうしても入団を肯((がえ))んじないので市長が罷免したので行政裁判を起こしておりました。こんなにして行政庁を占領してしまいます。ルイジアナ州の知事パーカーという人がこれを知って彼等を征伐することを最も熱心に大統領に向かって主張したものである。彼はもうしばらくすると自分の知事としての命令は一つも行われなくなってしまう。この機会に征伐しようといたしておったのでありますが、そういう風に行政庁を手のうちに収めてしまおうといたしておるのであります。』p17

『学生のうちにも働いておりまして、大学にもまた彼等の手が及んでおります。合衆国のある州立大学におきまして運動会がありまして、その日運動会の応援のために音楽隊が出演することになっておりました。その音楽隊のコンダクターは、これは黒人であります。ところがその運動会の前日にあたりまして何のゆえであるか知りませぬが、警察はそのコンダクターである黒人を拘引してしまいました。新聞紙の推測するところに依りますと、彼等はこの黒人はけしからぬというので警察とグルになって、それを捕らえてしまったのであると伝えております。そうしてその背後には州会の議員があって、もしこの黒人をこの音楽隊の中から除かないならば州会において、この学校の経費を削減してしまうということで脅したと伝えておるのであります』p17

『さらに彼等が行政庁において政治を行なっておるところはカリフォルニア州に次いで最も排日の盛んなオレゴンという州でありますが、このオレゴン州はまたこの秘密結社が占領いたしておるのでありまして、数日前の新聞にこのオレゴン州の前知事オルコット氏が今回の選挙に落選したのはKKKを非難したからであると書いていたことは御承知の通りであります。』p18

『米国一億人の人口のうち一千万人が黒人でありまして、約一割弱にあたっております。色が全く違っている一千万人の黒人が米国の脅威であります。彼等はしばしば彼等の権利を主張いたしますが白人はこれを圧迫いたして居ります。北の方の州においてはそうではありませんが南の方の州においては、13の州でありましたかと思いますが、そこにおいては白人と黒人とは停車場の待合室は別であります。一方にはホワイト・ウェイティンク・ルーム他方にはニグロ・ウェイティンク・ルームと書いてあります。私は証拠のためにその写真を撮って来て置いたのであります。客車も黒人のと白人のと区別をしておる。ある町に行きますと黒人の数は白人よりも多いのでありまして、その町においてさえ黒人は特別の法律によって律せられ、白人が行政支配権を握っております。ある地方では黒人のためには中学校を建てていないところがあります。また北の方の諸州にいる白人は黒人のために金を送って中学校を建てています。』p21

中略

『さらにユダヤ人に至っては諸君がご存知の通り最近「ユダヤ化」という事が問題となっています。ユダヤ人は世界の各地に彼等の得意とする商業と金融の力をもって政治その他あらゆるものを彼らの意のままに圧迫して行こうと言っておるのであります。このユダヤ人が世界各所において、ことに新教((プロテスタント))国の政府を転覆するところの企てをしておるという事は「照明灯」というかのKKKの機関紙がしばしば警告しておるのであります。』p22

中略

『アメリカにユダヤ人がどのくらい居るかというとニューヨークには人口600万のうち150万おる、全米国内に350万いると言われている。』p22

中略

『さらに天主教((カトリック))に至っては全合衆国内に1500万人ある。彼らはローマ法王の支配によって世界中の天主教徒((カトリック))が一団となって動いておるのであります。しかもそれが政治的野心を持っていると考えられている。』p23

中略

『彼ら((カトリック))はご存知の通り教育の程度がはなはだ低い、スペインやポルトガルへ参りましたときに、ポルトガルである書いた物を見ましたときに75%は無学文盲であったので、はなはだ不思議に思って領事館でこれを尋ねましたところやはりそうであるということであった。』p23

中略

『更に日本人、メキシコ人その他の各国人が入っておりまして、英語を話せない者が数百万人に達しておる。この混沌たる国情を見まするならば米国が移民を制限して統一を企てようとするのは無理からぬことであると、一応同情せざるをえない状態であると思う。』p24

中略

『このアングロサクソンが世界を支配して行きたい、アングロサクソンの支配権を米国内に確実にして、そうして米国をアングロサクソン新教((プロテスタント))の絶対なる権威の国に統一しようというのは誰にも考えられているところのものであって、この考えが秘密結社を企て、そうして各種の手段によってアングロサクソン以外のものを圧迫しておる。これがKKKの精神であると私は睨んでおるのであります。このKKKの撲滅に協力しているものは主として、ユダヤ人と天主教徒(カトリック)であります。この撲滅のためにAmerican Unity League(アメリカ統一連盟)が組織されて猛烈な活動をしているが、その会員中4割は天主教徒でその他はユダヤ人、黒人であって新教徒はごく少数であるのに徴しても、KKKの活動がいかに人種的であるかということが明白である。こういうふうな精神をもって彼らが諸外国人に対する。そこでアメリカ魂を植え付ける。このアメリカに排日案が出て来るということもこれまた当然でありまして、日本だけに圧迫を加えておるのではない。』p25

中略

『私ども遺憾と思ったのはヨーロッパの人々と同じように日本人を、同様の率をもって制限するなれば国内法でありますから文句はありませぬが、ただ彼らがヨーロッパ移民と日本移民とを差別待遇をしたところに彼らの大きな不公平があるのでありますが、それは日本が最も排斥しやすいから排斥されたので、将来ヨーロッパの移民をも絶対に排斥しなければならぬと言っておるのであります。これは単にKKKの主張ばかりでないと私は思う。ただ単に結社員100万人の問題ではなく、アメリカ人の中にこの問題が動いておる、アングロサクソンの国を建てるということであると思うのであります。彼らは宗教的よりも人種的に見ておる、これが彼らの見方であります。ここに私は非常に面倒な問題がアメリカに起こっておるということを考えなければならないのであります。これはただ今申しましたKKKの精神ばかりでなく、アメリカ人の精神でありますから難しい問題が起こるということを我々は考えなければならぬ。』p26

著者は教育行政の諸問題の視察で欧米を歴遊したんですが、ヨーロッパでは度々、日米戦争は起こるだろうかと聞かれたそうです。

しかし外交雑誌『コンテンポラリー・リヴュー』の記者が著者に語った見解は、日米戦争は起こるはずがないというものでした。

『ある外交雑誌「コンテンポラリー・リヴュー」という雑誌記者が私に向かって日米戦争は起こらないということを述べました。その理由とするところは、日本とアメリカの兵隊の強さを較べるならば恐らく日本が勝つかもしれない、しかしながら今日の戦争はただ単に兵隊の数や、兵隊の力だけではないのであって、その背後に潜むところの経済力に依るのである。そうして機械の製造能力をアメリカの機械の製造能力に較べるならばほとんど問題にならぬ。機械を外国から買い入れようとすれば日本には金がない。アメリカと戦争して果たして勝つであろうかということになれば、戦争を始めて最初勝ったにしても太平洋を渡り広漠たる大陸の中で戦争をして、そんな持続的な戦争が日本に出来るか、それは不可能であるくらいは日本の政治家は知っている。決して戦争は起こるものではない。この言葉は私は十分味あわなければならぬと思う。ただ拳固((げんこ))を出しても勝つものではないのでありまして』p27

天水晶の心臓

過去に書いたものでも置いて行こうかと思います。

1コメント

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  • 天水晶

    2018.10.24 01:33

    てすと