母と歯医者
(入院で日に日に弱っていく母を、自力で嚥下できないしかなり衰弱していたので)今退院させると絶対に3日で死ぬと担当医に言われた母を、コロナ下で面会も電話も原則禁止されたまま、体調の悪化だけを日々伝えられていたので、一週間後に退院させる旨伝え、胃瘻の手術も断り、6月1日に無理やり退院させて母を誠心誠意介護したら(二件の在宅医療に申し込むと、担当医が直接連絡して二件とも潰されたので、病院の薬も医療行為も受けれなかった)、当初は意思の疎通もほとんど出来ず、全身変色していたのが、7月後半には肌の色も健康な色に戻り、一人でイスに座って食事でき(餅も食べれた)、一人でトイレに行き、一人でツッカケを履いて庭に出られるまでに回復した。
7月中頃に入れ歯の最後の調整(入院で伸び伸びになっていた)で歯医者に行ったときも、車椅子から立たせて手を引いてあげると診察台まで歩いてくれ、診察を終えると、歯医者のスタッフ達に母は自分から、はっきりした声で「ありがとう」と伝えられた。
しかし8月頭に年寄りのよくかかる帯状疱疹にかかり、神経痛で一ヶ月寝たきりになり、上半身も起こせなくなった。
(このときは以前在宅医療を断られて見放された、近所の医院に行って診察してもらった)
神経痛は一ヶ月で消えたけど、母は歩けなくなっていた。
また一から誠心誠意介護すると、三週間後には再び一人でイスに座って食事でき、一人でトイレに行き、一人でツッカケを履いて庭に出られるまでに回復した。
頭もしっかりしていた。
その数日後、それまでは母を一人で歩かせても側で見守っていたのが、その日はトイレを終えた母が、首から下げたブザーを鳴らさず、一人で歩いてきた。
台所で洗い物をしていた俺は、びっくりしたけど頑張った母を褒めてあげようとした矢先、入り口で母が転んでしまった。
母はショックが大きかったのか、再び神経痛が再発して寝たきりになった。
三週間後、母は歯医者の定期検診に行く日だからと、頑張って起きてイスに座り、一人でご飯を食べ、テレビを見ながらそこに三時間程座り続けた。
合間に「大丈夫?」と母に効くと、その度に「大丈夫」と笑顔で返され、せっかくやる気を出している母に水を差すのもなんなので、母に任せていた。
しかし午後車椅子に乗せて歯医者に向かう途中、母は疲れて眠ってしまった。
寝起きの母をおんぶして診察台まで運び、待合室に戻ってじっと待っていると、優しい看護師さんが俺に世間話をしてくれた。
母の診察が終わると、俺は院長に呼ばれ、次から連れてこないでくれと遠回しに言われた。
寝起きの母は無反応で、口も大きくあけられなかったらしく(若い医師の手に負えず、院長が手伝ったらしい)、「治療行為もまともに出来ないし、何かあった場合にこちらの責任問題になるから、次からこういう状態のときはキャンセルして」と言われた。
俺は88歳の母が、朝は体調が良くても30分後にどうなってるかは誰にも分からないと伝え、以降の定期検診を辞退した。
その日の治療費は800円だった。
口を少ししか開けられなかった母がどのように検診されたか知らないけど、母はよほどショックだったのか、この日からまともに喋れなくなり、体調も悪化して、意識も不明瞭が続いている。
6月頭に死にかけで退院させた直後よりはましだけど、それに近い状態。
歯医者を責めるつもりはないけど、母が十年以上前から通い、信頼していた院長に、迷惑だからキャンセルしてくれみたいに言われて俺のほうがショックだった。
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